KEI AKAGI Trio / CIRCLEPOINT |
▲ケイ 赤城トリオの最新作 『CIRCLEPOINT』 |
【収録曲】 < tracks > 1.WADE PARK MORNING 2.NEW CHILDREN’S SONG III 3.CIRCLEPOINT 4.THREE WAY MIRROR (MARK EGAN) AZAL MUSIC BMI 5.OFFSTEPS (FOR SONSHIP) 6.SHIKAKUGAI KATSUDOU (UNQUALIFIED ACTIVITIES) 7.SINCE WHEN 8.TWIN LAKES 9.CHASING A WHIM 10.WADE PARK REPRISE ALL COMPOSITIONS BY KEI AKAGI, RED CASTLE MUSIC (BMI) EXCEPT WHERE NOTED. |
< member > KEI AKAGI piano SHUNYA WAKAI bass TAMAYA HONDA drums RECORDED BY:KATSUHIKO NAITO AND YOSHIAKI MASUO AT KAKINOKI STUDIO, JULY 2014 MIXED BY:YOSHIAKI MASUO MASTERED BY:PAUL CARMAN GRAPHIC DESIGN:MARCO MANCINI Tamaya Honda plays Bosphorous Cymbals. I would like to thank Yoshiaki Masuo, Shirley Masuo, Noriatsu Naraoka, Tomokazu Sugimoto, Ryu Kawamura, Noritaka Tanaka, Jason Harnell, Darek Oleszkiewicz, Kentaro Ogawa, Ryutaro Yoshida, and the University of California Irvine Claire Trevor School of the Arts. Thank you Sonship Theus for the beauty of your spirit. And finally, thank you to my family for your support of this project. TIME&STYLE JAZZ©℗2014 RED CASTLE MUSIC (BMI) All rights reserved Artist management : Ken OGAWA ( K2 MUSIC INC. ) |
『Circlepoint』by ケイ 赤城 |
点がなければ円は存在しません。しかし円がなければ点はただの・(点)です。円の中に向かい合う3人のミュージシャン、その中心に楽曲があります。 このレコーディングではパーマネントアンサンブルであるこのトリオの作品を収録しました。このトリオは個々の集まりではなく、グループです。トリオというものはジャズのリズムセクションの神髄であり、インプロヴィゼーションでメンバーの結合をありのままにさらけ出せるアンサンブルは他にありません。 このレコーディングに参加してくれた本田珠也氏と若井俊也氏。 この偉大な2 人のミュージシャンの素晴らしさはここには書ききれないほどです。彼らのプロジェクトへのひたむきな尽力によって、全てを実現することができました。珠也氏は私が長年に渡り信頼を寄せている仲間です。 彼はいつも音楽に革新を生み出してくれると同時に伝統への深い理解をもっています。 俊也氏は素晴らしい音楽的才能とテクニックを併せ持つとともに、冒険心や常に何かを見つける喜びを忘れていません。 この2人は、セッションにおいて多くの場合骨組みしか存在しない私の楽曲に、生命を吹き込み、肉付けをしてくれました。 今回のアルバムの作曲には5年もの歳月を費やし、収録日の一週間前に書き上げたものもあります。多くの楽曲は僕たち全員にとって新しいものでした。 全楽曲を伝統的なジャズの方法で録音しました。 各曲を数回通しながら基本的なコンセプトを固め、それから録音ボタンを押しました。 リスナーが聴くのはファースト・テークまたはセカンド・テークの演奏です。 どれも楽曲に対する僕たちの新鮮な印象の記録であり インプロヴィゼーションにありがちな予測性を回避していると思います。 Circlepoint は『Wade Park Morning』で始まり、『Wade Park Reprise』で終わります。 タイトルは私の個人的背景からつけられてます。Wade Parkは私の故郷であるオハイオ州のクリーブランドにあります。 もう一つ地名からつけられているタイトルとして、『Twin Lakes 』 があります。 ここは、私たちがレコーディングを行ったペンシルバニア州にある美しい地域の名前です。 唯一のカバー曲として、ベーシスト、マーク・イーガンの『Three Way Mirror 』があります。 ずいぶん昔に、偉大なブラジル人パーカッショニストでありドラマーであるアイアート・モレイラが率いるレコーディングで演奏をする機会がありました。それ以来、私の心の中にはいつもこの曲があり、再びこの曲に触れることができることを嬉しく思っています。 『Off steps (For Sonship)』について少し記しておきたいと思います。 これはマッコイ・タイナーやウディ・ショウ、ファラオ・サンダースといった20 世紀を代表する多くの偉大なミュージシャンと共演してきたことで知られるドラマー、サンシップ・テウス(1952- 2011)に捧げた曲です。 私は以前、フルート奏者のジェームズ・ニュートンのグループで、数年間サンシップと演奏する機会がありました。 彼ほど深い表現力と感情豊かなドラムプレイ、そして完全なるグルーブで私を圧倒し、畏敬の念を起こさせるドラマーは他にはいません。残念ながら彼は健康面や経済面でとても苦労しましたが、一切文句を言わず、不屈の精神を持ち、いつも愛に満ち溢れていました。 彼は『美しい音楽は美しい心からのみ生まれる』という格言を具現化したような人物でした。私は、彼と演奏できたことを恐縮するとともに心から誇りに思っています。 Circlepoint を聴いていただくと、伝統的音楽のカテゴリーの曲と、より自由でいわゆるアヴァンギャルドなアプローチの曲が混ざり合っていることに気付くかもしれません。これは私にとって自然なことであり、意図的な並列です。 ジャズの歴史は、スタイルの変革の連続です。革命はいつも派手な騒ぎ、宣言、そして議論を伴うものだと私たちは考えがちです。 そのような変革は意思を明確に発信することで『一般市民』の多様なエネルギーに焦点を与え、その結束力を頼りに動き出して従来の力関係を覆しそれを新しいものに置き換えることを目的とします。 一方で、より静かで微細な変革もあります。 それは 本来根本的に異なる考え方やスタイルを統合して新しいコンセンサスを形づくる変革です。そのような変革は、特定の先導者がいるわけではなく、長期にわたって徐々に広がっていきます。ジャズの伝統的なインプロヴィゼーション(たとえばビバップ)とアヴァンギャルド(フリージャズ)の両方が生まれてから半世紀以上過ぎた地点に今私たちはいます。 今はどちらのスタイルも同等に『クラシック』と言えます。多くの国、特に日本では、どちらのスタイルも居心地良く共存しており、同じミュージシャン、そしてなによりも同じ聴衆に共有されています。振り返って思えば結論は必然です。 すなわち、過去十数年で(あるいはもっと前から)静かな変革が始まっています。 ジャズの形式は今やボーダレスになり、そこから生まれた新たな統合体はもはや一般的な標準です。過去には全く違うものであった要素が、今、より大きな連続体の一部として一体化しているのです。 私はリスナーにCirclepoint がまだ現在進行形であるこの新しい融合の一部となることを願っています。 ケイ赤城 2014 年秋、東京にて。 |